◆横浜市 天川朋子様

恵比寿アンニュアージュスクール第6回。講師、明石康氏。

最終回にふさわしく(?)『親という存在』のテーマにどう結びつければいいのか、という観点からは一番難しい講義であった。
お父様はのんびりした優しい方、お母様は面倒見が良く世話好き。多忙ゆえ父親としては「良く言えば背中を見せて育てた」。
ご両親について、或いは自分が親の立場としての具体的な話はこの程度だったのである。

「何か上手く出来るようになるためにはそれをしないといけない状況に自分を追い込む。恥をかく。」
「人の話にきちんと耳を傾けるのが一番大事。
何を夢見て、何を恐れているか。
(対立する両者にも)どこか共通することがあるはず。それを探り出す」
「相手が自分と同じだと思うと違いが目に付く。自分と相手は違うという前提で話せば共通点があると嬉しくなる」…人間関係をつくる上での珠玉の話。
それでも
「説得が出来ない場合もある。
馬を水辺まで連れていくことは出来ても、水を飲むのは馬が飲みたいかどうかによる」
最善を尽くしても厳しい結果の時もあったのだろう。
「あきらめない」というのはあきらめたくなるような状況をのりこえてこられたから。話が進むにつれ華やかな経歴の陰にご苦労がいろいろあったのだと悟る。
そこはさらっと流すところに明石氏の強さがある。
「日本人は細やかな心配りが出来る。自虐的になる傾向を変えて、良い所を見つけよう」
明石氏が日本人に望むことは自ら実践してきたことだから説得力があった。

まあくさんとの対話で進む形式はそんな明石氏の話術を生で観られる貴重な機会でもあった。
「まあくさんのおっしゃる通りです」「今のご意見に同意します」
まず相手が気持ちよく話せる言葉が自然に出てくるのに感服。
そしてもう一つ。
知らないことは「知りません」とあっさり言うのだ。聞く側が明石さんなら当然ご存知だろうと話を振っていても、である。
知ったかぶりをしないというか、凡人ならつまらぬ見栄を張ってしまいがちな場面で「知らない」と言えるのは大したものだと感じた。

最後は、吉川晃司氏を交えたアンニュアージュトーク。
まあくさんからの命の危険を感じる場面にどうするかという投げかけに対して、吉川氏の「気配がわかるようになる、動物としての本能が出てくる」という対自然の話、
明石氏の「じたばたすると見苦しい、相手の術中にはまる。自分は多くの人命を背負っていると意地を見せる」という対人間の話が対照的で面白かった。
明石氏の「意地をはる」強さは吉川氏にも響くところがあったようで、初対面の2人の距離が縮まったと見て取れた瞬間。
きっとこういう瞬間を今まで何度も重ねてこられたのだ。

東北訛りの物腰の柔らかさはお父様譲り、ずっと人の間に立つことに関わられているのはお母様の血。
『親という存在』に結びつけるならそんなところであろう。
ただ、テーマに囚われるより、このテーマをきっかけにいい話が聞けてよかった。それだけで充分な気がしてきた。


追伸
明石先生、最後に質問をした者です。私は5人姉弟、4人の弟を持つ姉です。
同じ姉弟構成に親近感を抱き、先生の交渉、人に接する方法は家族構成の中で培われたものなのかという質問をさせていただきましたが、
先生ほどの方が決して交渉が得意な訳ではない、家庭内の交渉事が一番難しいとおっしゃったことにとても勇気付けられました。
講義の後、自分が人の間に立つ立場となる出来事が起こりました。先生のお話を大きな励ましに、あきらめず向きあえています。
この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます。